第84話    「釣人波に浚われる」   平成20年10月31日  
 1025日朝840分ごろ新潟県柏崎の堤防(長さ3キロ)から、11人の釣人が波に浚われて転落した。幸いにして11人全員が救助され、助かったと云う。更に山形県鶴岡市の米子漁港でも高波で1人転落、10人が防波堤に取り残された。この日の朝北西の風から、強い西風に変わっている。前日の夜半からの雨風があり、濁りを期待して多数の釣人が、堤防に向かったものと推測される。米子漁港の西側の防波堤は結構高くなっている。その高い防波堤を超えて、波が押し寄せてきた。

 
この日、何時ものように酒田港を巡回したが、酒田の離岸堤では所々波が被っている。最上川河口の南突堤では北西から西風に変わると同時に曲がりから先は大波が押し寄せて来て、4m余りの高い堤防の上を波が跨いで港内に入って来ていた。日本海の秋から晩秋に掛けての急な風変わりには気を付ける事は釣り人の常識だった。そんな常識を知らぬ俄か釣り師が増えた事が海難事故の原因だ。決断の1520分で命取りになる事が多々ある。

 
最近では余り聞こえて来ないが、自分がまだ若い頃毎年のように釣り人が波に浚われて亡くなったと云う海難事故が新聞に出ている。海の怖さを知らぬ者が増えてきているからである。海が時化ると魚は岸に寄って来る。其処を狙いたいと云う気持ちは分からないでもないが、たかが釣りである何も命と引き換えにする大事でない。安全を第一、釣果は二の次と云う気持ちを持たねば釣り人としての値打ちがないと云うものだ。

 
以前11月に入り海が時化ると尺物黒鯛が、大挙して北防波堤の内側に入って来たものだ。後から来た釣り人は、安全で良い場所が取れずに、どうしても危険な場所(先端部近くの波が出そうな場所)に入ってしまう。入った時はそんなでもないのだが、30分、一時間に一度の大波が背後から来る事がある。足場が濡れている場所、時折飛沫が飛んで来る場所には絶対に近づかない方が良い。増して晩秋になると海苔が付着しているので滑る事もあり大変危険な場所でもある。

 波に浚われたのは、自己責任かも知れぬが、少なくとも自己責任だけでは済まされない事を感じて欲しいものだ。遭難の救助をする者は命を掛ける事もあり又家族に悲しみや経済的な多大な迷惑を掛ける事ともなるのだから・・・・。