第90話    「庄内竿のヘビ口 U」   平成21年01月31日  

 作り方として始め麻を適度に細く撚って細い麻縄を作る事から始まる。その昔祖父が藁工品の卸問屋を手広くやっていて、樺太、北海道、朝鮮あたりまでの漁業関係者を中心に商売をしていた。しかし戦時中の統制経済で中止を余儀なくされた。そんな関係で子供のころ、一番番頭さんだった方から、何度も藁や麻で細い縄を作る事を聞いたものだった。事もの事とて、完全に自分の物に出来なかったのが悔やまれる。出来なかったから、そんなもの買えば良いとして覚えなかった事が、今にして悔やまれる。亡くなった嫁に来た母は、舅からそんな事も出来ないと云われたくなくて、必死に覚えたと云う。

少し長めに作った細い麻縄を56cmに切って、二つ折りにする。麻縄の道糸を結部分を残し、小刀の先で何度も何度もしごくようにして少しずつ細くしていく。この作業の時の力の配分が慣れないと結構難しい作業である。人一倍気の短い自分には、この作業が一番辛く長い時間である。力を入れ過ぎると麻縄を切ってしまうし、ある程度入れないと細くはならない。

時々麻縄を手に持って、出来具合を確認する。そんな作業を何度か繰り返して、いよいよ穂先に取りつけて、具合を見る。穂先の太さと麻縄とのマッチングが合わなければ、先の作業を繰り返す。その後麻縄を細い絹糸で穂先にしっかりと巻きつける工程に入る。その時トップ側が少し太く下が細くなければ、何となく不格好になるので細心の注意が必要だ。

絹糸を巻きつけ後、二液性の接着剤をヘビ口全体に満遍なく塗布する。特にヘビ口の穴は念入りに、接着剤で固めて置きたいものだ。瞬間接着剤ではいけない。自分も何度か試してみたが、麻縄がいとも簡単に切れたりするのでも、釣りの用を足さない。その昔は、この工程は漆や膠で固めたものだ。自分が釣りを始めた頃は、安竿には黒か茶色のカシュウを使った。

最終の出来上がりが左図である。後は接着剤を完全に乾かして、その後黒漆(釣り具屋で売っている新漆でも良い)か、黒のカシュウを塗り固める。これでヘビ口の取り付けの完成となる。簡便にのリリアンを付けても竿としての竿としての用をなすのだが、庄内で釣る時は古来よりの伝統を重んじヘビ口(サバ口)を付けたいものだ。


庄内竿のヘビ口の完成品