第92話    「ウラ継」   平成21年02月28日  
 庄内竿で大変苦労するのは、如何にして穂先を元竿にピッタリと合わせるかにある。ご承知のように、庄内は冬に大変強い北風が吹く。為にニガタケに限らず竹の穂先が、完全に凍りついてしまい、ニガタケの殆どが枯れてしまう事が多い。二年子で23割、3年子で78割の確立で、竹に穂先がない。これが45年子となると、穂先があるのは滅多になく、それが竿にでもなろうものならすこぶる珍重される。そこで穂先のない竹を竿として使えるようにするするには、穂先専用の背の低いニガダケの竹藪の中から硬くしまった竹から節間、竹の色等、色々な太さの物を数多くストックしておく必要がある。

 
名竿師上林義勝等は先輩の名竿師が亡くなった時に、ウラ竹を荷車一杯頂いて、自分の家に運んだとの逸話がある。数にして何千本であっただろうか?そんな数があっても、名人にとっては気に入った合うウラはそうそう有る物ではなかった様だ。その為大層気にいった一本の竿ウラに20年間も探し求めたが、未完のまま亡くなったと云う竿もある。後日談があり、勿体ないと昭和の名人山内善作にその竿を持ちこみ完成したと云う話が伝わっている。上林義勝はそんなにしてまでウラを探したため、名人、名竿師と云われる所以でもあるのだが、素人竿師の自分たちでは、まずまずのウラであれば窮屈に考えなくとも釣り竿として使えればそれで良いと考えている。一般に竿を作り、売っていた職人達でも、生涯に名竿等は数える程しか作れなかった云われて居るのだから・・・・。

 
まず手持ちのウラ竹の中から、竿の調子を見て竹肌と節間、太さの合う物を探す事から始まる。穂先と元竿のバランスも大事な要素となるから、一応紙テープなどで止めて、竿を何度も振って見る。ウラを何本かとっかえひっかえして手に持ってしっくりと来るものが良い。ウラが決まったら、太さと節間を合わせたところでぴったりと合うようにして、両者を斜めに切る。中通し竿と延べ竿では、継ぎ方が異なるので、まず延竿の作り方から説明する。

ウラと元竿の間が先端部に近く細ければ竹ひご、太ければ細いヤダケ、ステンレス製の鉄芯を合わせ補強し、二液性の接着剤を塗り乾燥させる。竹ヒゴの代わりに細いグラスファイバーを使っても良い。又将来中通竿に改良する場合が有るとすれば、壊れたカーボン竿の中ブラを使ったり、補強材を使わずにウラと元竿をぴったりと合わせ接着剤で固める事もある。従来は接合の部分に薄く真綿を巻いてその上に漆を掛けたものだが、真綿を巻いて二液性の接着剤を掛けて乾燥させ、その後で紙ヤスリで凸凹を修正しても良い。自分は絹の細い糸を巻いて接着剤を掛けている。


23日置き、中まで乾燥したところで上に化粧漆(新漆、カシュウ等)を塗る。色は茶色系統が落ち着くが、茶、黒、黄等を合わせて自分の気に合った色を作るも良い。自分の好きな色を合わせても良い。乾燥させてから、後一度漆を薄くした化粧漆を掛けた方が、見栄えが良い。化粧漆を二度か三度塗ると完成する。